佐用町昆虫館オフィシャルブログ


by konchukan1

初蝶ニュースNo.5


 今週は、ついモンキチョウ(1♀)が飛んで、めでたく「初見」となりました。
去年のモンキチョウの初見は3月4日(姫路市)でしたから、1日早い目撃にな
りますが、ほぼ平年並みと言えそうです(私個人の観察ですが、モンキチョウの
初見記録で最も早いのは2004年の2月21日でした)。

 2017年3月3日 播磨町 モンキチョウ♀
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 そして今日、またまた新たな情報をいただいています。

【越冬組登場!】

 まず、齋藤泰彦さんからは、宝塚市でのイシガケチョウとテングチョウの目撃
情報です。お墓参りに行かれた際の目撃だそうですが、イシガケチョウはお墓に
備えられたストックの花で吸蜜していたとのことです。長い越冬で、おなかがす
いていたんでしょうね。

 脇村涼太郎さんからは、昆虫館でのイカリモンガの目撃報告がありました。こ
ちらは初蛾ですね。イカリモンガは、夏に発生した2化目の個体が越冬すると図
鑑には書かれていますが、私も越冬直後の個体は見たことがありません。なかな
かキュートな蛾です。

 中川貴美子さんからは、神戸市西区でツマグロキチョウの目撃情報です。ツマ
グロキチョウは、ここ数年、生息地から離れた場所での越冬個体確認が続いています。

 
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 斎藤さん、脇村さん、なかがわさん、どうもありがとうございました。

【沖縄情報】

 ところで今週、会員の山本勇さんからメールをいただきました。2月に沖縄本
島へ行かれ、ジャコウアゲハやクロアゲハなどを目撃されたとのことです。その
山本さんが「沖縄のように年中蝶が見られるところでは、初蝶という観念も違う
のでしょうか」とメールに書かれていたのを読んで、「そういえばそうだ」と今
更ながら思い至りました。

 確かに沖縄では、ほぼ年間を通じて蝶の姿があるようですし、たとえば成虫越
冬中のマダラチョウの仲間でも、気温が上がれば活動します。もちろん、寒冷な
時期(といっても那覇市の今年2月の平均気温は17.1度、日最高気温の平均は20
度近くあります)には成虫が見られない蝶もいるのでしょうが、それを補って余
りある蝶がいるわけですから、なるほど「初蝶」という感覚は、寒い時期には蝶
がほとんど(あるいは全く)見られない地域で、蝶の飛翔に春の到来を感じるこ
とができる地域にしかない感覚なのかもしれません。

 初蝶リレーでは、一応、「立春を過ぎてから、初めて現れるその年に羽化した
蝶」を初蝶と呼ぶことにしていますが、それじゃあ、今年のように1月上旬に見
られたベニシジミやヤマトシジミ、ウラナミシジミは「初蝶」じゃないのか、と
突っ込まないでくださいね。私も困ってしまいますから。

 「その年に最初に見られた記録」を、虫屋さんは「初見」と呼んでいます。と
ころが1月上旬ごろの記録については、「初見じゃなく、去年の生き残りだ」と
いう反論もあるようです。しかし一方で、希ではありますが1月に羽化する蝶も
いるのは確かで、私も去年の1月7日には、羽化したての新鮮なモンシロチョウ1
♂を目撃しています。

 けれどもこうして寒い時期に羽化する蝶は、その後の寒さで絶えてしまうこと
がほとんどです。

 日本蝶類研究の泰斗である故白水隆博士は、「次世代への有為な発生に結びつ
かないと思われる以上に早い記録」を、初見とは別に「早発記録」と呼ぶことを
提唱されていたようですが、これもひとつの考え方ですね。

 初蝶リレーで立春を基準にした理由は、近畿地方では、おおむね1月末~2月上
旬の頃に、気温がその冬の最低水準となり、その後は寒暖を繰り返しながら緩や
かに上昇してゆくことが多いからです。つまり、この最も寒い時期を境としてそ
の後に現れる蝶から、その年の世代の始まりだと考えたわけです。下は、2014
~15年と、2015年~16年の冬の日平均気温変化を、10日の移動平均にしたグ
ラフです。ちょうど1月末~2月初めに、その冬の「底の寒さ」がやってきてい
ることがわかります。

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 でもこれは、あくまでも「初蝶リレー」という催しをおこなうための決めごと
ですから、あまりこだわる必要はありません。みなさんそれぞれに、初蝶を楽し
んでいただければいいのです。

 でも「初蝶」という私たちにとって当たり前のような感覚も、所変われば全然
違うんだと、あらためて気づきました。


 今週も、皆様の情報をお待ちしております。
 情報はこちらまで=smallbluekh@hotmail.co.jp

 初蝶リレー担当 久保弘幸
Commented by grassmonblue at 2017-03-06 21:21 x
ご無沙汰しています。
初蝶の考え方、興味深く読ませていただきました。
私も、初見情報を集めていて、1月下旬が最も寒い時期であることに気づき、原則として2月以降を初見とみなすこととしました。
モンシロチョウの場合など、1月に発生が多発するようだと、越冬という概念さえなくなってしまうように思えます。要は気候の亜熱帯化。
従って1月発生は普通はビニールハウス内の羽化とか特別の遇産であることが多いのではないでしょうか。
付け加えますと、経験則ですが、モンシロチョウは平均気温10℃が2~3日続きさらに最高気温が20℃に達するような時期に発生するように思います。モンキチョウは気温への感度はさらに高くてもっと短期の温暖日に発生するように思えます。累積気温との相関はないような気がしています。
ゆえに立春以降とされているのは合理的と思いますが、暦年仕切りにして越冬蝶の出現もふくめ参考記録として採録されるのもアリかと思います。面白い発見があるかもしれません。
by konchukan1 | 2017-03-05 22:23 | 初蝶リレー | Comments(1)