佐用町昆虫館オフィシャルブログ


by konchukan1

陸前高田市立博物館・被災標本レスキュー報告

三木進です。

八木先生のご紹介で、6月13日(月)から19日(日)まで、
盛岡、陸前高田の両市にて昆虫標本のレスキューをやってきました。
久保さんを中心にした当会災害復旧支援委員会の斥候役です。

現地の皆様に、心から受け入れていただき、
岩手県立博物館の藤井千春・主任専門学芸調査員(生物)の見事な心配り、気配りによって、
私たち「こどもとむしの会」ならではの、支援活動が見えてまいりました。
再び7月中旬にも、現地に行きたいと考えています。
一人でも多くの皆様がご参加くださいますことを、
心よりお願い申し上げます。

まず、陸前高田の現状です。

ただ広大な平面が広がり、所々に瓦礫の山が。
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被災した車が海岸沿いに固めて置かれていました。左手に海が見えます。
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「高田松原」と歌われた防風林、
津波に備えた松の大木は、ことごとく流され、切断して固められていました。
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ほとんど、誰もおらず、
ボランティアは東京都民が1週間交代でつなぐ「第十三次都民ボランティア」
に出会ったくらいです。

博物館は、海側が全く窓のない構造で作られ、まるで壁が立っているようようでした。
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内部を案内してくださった同館職員で、
90年代から岩手県の昆虫を徹底して調査されてきた砂田比左男さんによると、
この構造が標本の流出を防いだそうです。
引き波から、守ったのです。

今回の津波で最高(遡上高を除く)を記録した15、8mもの波が湾内を埋め尽くし、
次いで激しい勢いで沖合いへと全てのものを運びさりました。
砂田さんも両親を救出後、流れ去っていく自分の家の屋根を見守っておられたそうです。

館内は、すっかり整理されていました。大変な作業だったでしょう。
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この中から大量の標本箱や植物標本を運び出し、
盛岡の岩手県立博物館を基地に、全国25の博物館に送り出されたのです。

手洗いの窓から外を見ると、瓦礫の整理が行われていました。
そこには、人々の暮らしがあったのです。
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次に、岩手県立博物館に残っている、郵送不能な陸前高田市立博物館の標本です。
標本箱にして150箱ほど。
カビの発生を抑えるために、文書、植物標本とともに冷凍庫へ。
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取り出された十数箱の修復作業にかかりました。
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藤井先生のご指導を受けました。
4日間作業の内、一日は一人、二日はアブの研究者で、内藤先生のハバチの研究に
強い関心を寄せられていた岩手県博の協力員千葉武勝先生がご一緒してくださいました。
そして一日は4人での作業となりました。
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(藤井先生撮影)

甲虫の修復は、比較的効果がありました。
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クワガタの被災標本箱です。泥をかぶっています。

チョウには、てこずりました。泥パック。
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まず、ピンセットで泥を剥がす。
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修復後。
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ラベルのみの標本も。
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ラベルのみの救出も。
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これが、私の4日間の仕事です。

藤井先生のご配慮で、現在の陸前高田市立博物館の担当者、砂田さんや熊谷賢学芸員ら4人が4時間近くかかって岩手県立博物館まで来てくださり、修復に当たっての基本的な考え方や手法について、ご意見を伺う事がことができました。お昼ご飯をいただきながら、貴重なお話を聞かせてくださいました。4人の内、3人までが家を失われたそうです。
冷凍庫の前で、打ち合わせをされる陸前高田市立博物館の4人(左側)。
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陸前高田市立博物館は、現在、廃校になった旧出生(おいで)小学校に移り、再開に向けた活動が進められています。図鑑類もまったくないとのことで、全国の虫屋に協力要請がいりますね。


なお、千葉先生は私がカミキリ屋と知り、ミチノクケマダラカミキリの生息地へ車で案内してくださいました。
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歴史ある「岩手蟲乃會」の最新刊の會報第38号を、当会に寄贈くださいました。
山では、ウスバシロが飛び、まだ春の延長のようでした。
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藤井先生の上司のクマゲラの著名な研究者・F先生からは、「本州のクマゲラ」「本州産クマゲラの謎の生態を追う」の2巻のビデオを2セットいただきました。有効に使わせてもらいます。

最後に岩手山。岩手県立博物館の二階レストランからの眺めです。
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啄木の「ふるさとの山に向ひて言ふことなし」
賢治の「グスコーブドリの伝記」の発想を得たであろう雄大なコニーデです。
反対側には、はるかに「遠野物語」の奥山、早池峰山がかすんでいました。

今回、私は花巻の宮沢賢治記念館、盛岡の啄木・賢治青春館、
網張温泉、鉛温泉にも親しむ機会を得ました。
山では、どこでもカッコウ、ホトトギス、ウグイスが鳴いていました。

どうか、皆さん7月の11日から18、19日ぐらいを目標に、標本レスキューと、
東北を味わう旅に出ませんか。ぜひ、三木までご連絡をください。
詳細は、災害支援委員会、理事会に諮った上で、追って連絡いたします。

(文責:三木進)
Commented by 山本です at 2011-06-21 10:57 x
三木様:
たいへんお疲れ様です。新聞、テレビでは見ていましたが、被災した標本群を見て、より一層、身近に被害の甚大さが理解できたように思います。すばらしいルポに感謝。
こんな大変な事になったのに、皆さんの絶望、悲しみを他所に、何もなかったがごとく虫は遊び、鳥は啼き山はどこまでも蒼い。怖いほどの自然のおおらかさ、奥深さを感じています。
しかし、標本、ひどいなあ。同じ虫屋として標本への思いは僕も同じです。なんとか少しでもお力にとは思うのですが。。。
Commented by むしのおっちゃん at 2011-06-21 16:16 x
山本様
レス、ありがとうございます。実は、タッパーに収納された、フリーザーバック入りの標本や、とてもひどい三角紙のチョウなどが、あります。
現地で山本さんの顔が浮かびました。また、助けていただくかもしれません。よろしくお願いいたします。
by konchukan1 | 2011-06-20 19:09 | 東北支援 | Comments(2)